25.レイト!元気になる!

小説
主要な登場人物
レイト 
 雷を操れる少年
 じいちゃんの言いつけで王都へと旅立つ
 また正義に生きることを目指している。
ルアル 
 魔法を使う魔術師の少女
 レイトとは旅の途中出会い、
 一緒に王都を目指す。

リモク村の登場人物
ルシィ 
 リモク村の宿屋を営む女性。
スバン
 ルシィのお父さん。傷だらけで登場
ニンバス 
 リモク村の木こりをやっている若い青年。
 実はルシィの幼馴染

前回のあらすじ
 大きな魔物を倒したレイトは、倒れて療院で眠っていたところ、目を覚ました!
どうやらニンバスもルアルも元気そうにしており、無事に村へ帰ってくることができたのだった。

レイトが病院で目覚めて翌日の朝になった。

「元気になったぞ!!!」

村の療院の前で立つレイトは、両腕を上げ、叫んでいた。

衣服も元着ていたものへと戻っている。

どうやらこの療院を担当しているお婆ちゃんが、ボロボロになった衣服を補修してくれたようだ。

そのお婆ちゃんは、レイトを見送るために後ろへ立っていた。

レイトは後ろに振り向くと、大きな声でお礼する。

「ありがとう!」

お婆ちゃんは、小ぶりに手を振りながら見送ると、レイトは走り出した。

「よし、体は何も痛くないぞ!」

1日体を動かせないだけでも、鬱憤が溜まっていたレイトはそれを解消するかのように走った。

村を走り、向かう場所はただ一つ。

ルシィの宿屋だ!

走り続けて、宿屋の目前まで来ると、ドアノブを掴んだ。

そしてドアを開ける。

宿屋に入ると受付場のカウンターにはスバンが座っていた。

「君は…」

と言いかけた言葉を遮るかのようにレイトは叫んだ。

「スバン!傷はもう大丈夫なのか!?」

スバンは少し驚いていたが、レイトの元気のいい姿を見て笑みを浮かべた。

「ああ、私はもう大丈夫だ。君は大丈夫なのか?」

そう言われたレイトは、元気よく返す。

「俺ももう大丈夫!」

軽く飛び跳ねながら、調子が悪くないことを見せつけた。

「ほんとに元気そうだな」

スバンもレイトもお互い安心する。
そして徐々に落ち着いた雰囲気になったので、レイトは質問する。

「俺が眠っている時、魔物は大丈夫だったのか?」

それについてスバンは不思議そうに答える。

「魔物…?化け物のことか。やつらは消えてしまったよ」

レイトはそれを聞いて驚いていた。

「そうなのか!?」

スバンは静かに頷いた。
そしてレイトを見て言う。

「…君達が化け物の住処へ入った後、私たちもそこへ向かったんだ」

一回咳払いを入れて続ける。

「その時は、まだ化け物は元気よく動き回っていた。だが、ある時一斉にみな泥のようになってしまった」

その不思議な話にレイトは頭を傾げている。

「泥に…?」

それに対してスバンは首を横に振った。

「わからない。だが、ニンバスが言っていたのだが、君達が倒してくれた大きな化け物。それが原因だったのかもしれない」

気絶していたレイトにとっては、記憶がない。
あの大きな魔物を倒したことで、小さい魔物までやられてしまうものなのか。
知識がないレイトにとって頭を悩ませる。

「まあそんなことはいいんだ」

悩むレイトを諭してか、スバンは気にしないように促した。
そして話を続ける。

「あれからこの日まで、村のあたりを探索しても、化け物は見当たらない」

スバンのその言葉を聞いたレイトは体が震えた。

「なら、もうこの村には出てこないってことか!」

「今のところ…だがな」

スバンは優しく笑みを浮かべながら答えた。

それを聞いたレイトは両手をあげて喜んだ。

「やったー!」

スバンは、歓喜しているレイトに向けて頭を下げた。

「君たちのおかげだ。この村の客人だったはずなのに、危険な目に遭わせて申し訳ない」

申し訳なさそうにするスバンを見て、レイトは首を横に振った。
そしてスバンを見て自信満々に言う。

「気にするな!俺は助けたいから助けたんだ!助けるために危険な目に遭うなんて当たり前だ!」

レイトは右手を前に構えて握りしめると、笑顔で応える。

「それに俺のじいちゃんは、みんなのために良いことをして生きろって言ってた!だから俺はそれを守っただけだ!!」

自信満々に答えるレイトの言葉をスバンはしっかりと受け止めた。

「そうか‥ならば、感謝を伝えるべきだったな。ありがとう」

レイトは笑って頷いた。

初めてスバンと会った時は、緊迫と不安な空気が張り詰めていた。

だが、それが嘘かのように今は穏やかな時が流れている。

魔物がいなくなったことで、レイトもスバンも気分が落ち着いて話すことができているのだ。

突然、レイトは思い出したかのようにスバンへと問う。

「そういえば!ルシィはどこだ!」

そう言うと、ちょうどよくレイトが入ってきた後ろのドアが開いた。

「ルシィさん、今日はたくさん買ったね!」

「うん!今日はたくさん料理を作るからね!」

そこには2人で楽しそうに話しているルアルとルシィがいた。
ルシィは左手で抱き寄せるように大きな紙袋を持ちながら、もう一方の手でドアノブ回してドアを押し開けていた。その後ろでルアルは両手で大きな紙袋を持ちながらルシィを見ていた。

ルシィが元気そうな姿を見てレイトは喜んだ。

「ルシィ元気だったか!!」

そう叫ぶと、ルシィの元へと飛び込もうとする。

それに驚いたルアルは、ルシィの後ろから飛び出した。
そしてレイトの懐へと足を突き刺すように、蹴りをかます。

「ぐはっっっ!!」

レイトはくの字を描くように、飛ぶとそのまま地面に倒れた。
そんな光景を見たスバンとルシィは、目を見開いていた。

「誰よ!…と思ったらレイトじゃない!?」

仰向けに倒れたレイトは言う。

「ひどいぞ…ルアル」

そう聞いたルアルはレイトのほうへと駆け寄ると、謝った。

「ごめんごめん。名前を叫んで飛び込むから不審者かと…」

そんなやりとりを見たルシィとスバンは2人とも苦笑いをしていた。

その後にルシィとルアルは買った荷物を宿のレストラン側にある厨房へ置きに行く。

レイトは腹を撫でながら立ち上がっていた。

スバンが一言発する。

「大丈夫か…」

レイトは無言で頷いた。
先ほどの穏やかな空気とは違い、とても微妙な空気が漂っている。

気を取り直して、2人が戻ってくるとレイトはルシィに声をかけた。

「無事でよかった!!」

それに対してルシィも返す。

「うん、レイトくんとルアルちゃんそしてニンバスが助けてくれたおかげよ!」

お互いに笑みを浮かべた。

「レイトくんもすっかり元気そうでよかったわ!最初は一日中眠っていて、すごく心配していたけど、昨日元気な姿を見せたってルアルちゃんがすごく喜んでいたから安心してたわ!」

そうなのか!とレイトはルアルの顔を見る。ルアルは小恥ずかしそうにしていた。

「別に喜んでないわよ!」

そう言うルアルにルシィはニヤリと笑って見せた。

「ほんとかなぁ?」

ルシィがルアルをからかう姿を見てレイトは思った。

(2人とも仲良くなってる…!)

仲良い姿を見たレイトはどこか嬉しい気持ちでいっぱいだった。

まるで前までの陰鬱した空気が嘘みたいだ。

ルアルもルシィもスバンもニンバスも、みんな元気よく生きている。

それだけでレイトは命をかけて戦っただけはあったと考えていた。

(よかった…俺じいちゃんの言いつけ守れたよ)

「あのね?別にあんたのこと心配してないから」

ルアルがレイトの前に立って言う。
レイトは考え事をしていたせいで、一瞬反応が遅れてしまう。
それでもルアルを見て、口角を上げる。

「ああ!わかってる!…嬉しかったんだろ!!」

からかうように言うレイトに頬を染めて怒り気味に、そっぽを向く。

その光景を見たルシィは楽しそうにしている。

「素直じゃないわね」

そう言いながら微笑んだ。
スバンもこの日常を楽しんでいるかのように微笑んでいた。

レイトは安心した。
平和が戻ったこの村で、レイトは自身の行いに安堵した。

みんなが生きて帰れたこと。
この村を救えたこと。

その全てに歓喜していた。

「よし!俺もこの村の手伝いがしたい!!」

レイトが元気よくそう言うとルシィが答えた。

「それなら、私の料理の手伝いを」

しかし、言いかけの途中でルアルが遮る。

「いえ!レイトは料理が絶望的なので、無理です!」

レイトは目を細めてルアルを睨む。
それを無視してルアルは答える。

「料理は私が手伝います!だからレイトには別のことを任せてください」

胸に手を当て自信満々に答えた。

そんな姿にレイトは思う。

(ルアルって料理うまいのか…?)

今思えば料理を作った記憶がないレイトにとってルアルの料理は少し楽しみでもある。
そのため、このまま黙っていることにした。

だが、ルシィは頭を抱えていた。

「他にやることね…」

困った表情を浮かべるルシィの姿を見て、スバンが口を開いた。

「ニンバスの元へ行くといい……怪我をしている彼からしたら、人手を探しているかもしれない。」

ルシィは悩みが消えたかのように、明るい笑顔を見せた。

「そうね!ニンバスに会ってみたらいいかもしれないわ!」

ルシィがそういうとレイトも頷いた。

だが、スバンは一つ忘れていたことを思い出して伝える。

「レイトくん…今夜は弔いも含めた祝葬会をここで開く予定だ」

レイトは初めて聞いて驚いた。

「なんだそれは!!」

目を丸くしながら、ルシィやルアルを見る。

「あんたずっと寝てたし、知らないわよね」

ルアルはそう言う。
続いてルシィが話す。

「祝葬会はね、化け物のせいで亡くなった人たちを弔うと同時に、その脅威がなくなった今を祝うための会よ」

レイトはそれを聞いて納得した。

「だから、さっき大量に食材をもっていたのか!」

ルシィは答えるように優しく頷いた。
ルアルはやれやれと言わんばかりに首を振り、レイトに言う。

「だから、夜には戻ってきなさいよ」

「わかった!」

レイトは素直に答えるのだった。

スバンはまるで自身の子供を見るかのように優しい眼差しをむけていた。
そうして微笑むとルシィに言う。

「ルシィ、ニンバスの居場所を教えてあげなさい」

「わかったわ!」

ルシィは、宿屋のカウンターに置かれたペンを取って紙にニンバスの住んでいる場所を簡単な地図にして描いた。

それをレイトに渡すと直接口頭で場所の行き方を教えるのだった。

「ありがとう!」

「いいわよ。気をつけていってらっしゃい。」

レイトはお礼をし、その後すぐさま宿を出ていった。

その後ろ姿をルシィは見つめて、静かに頷いた。

「よし!今夜のために料理を作りましょう!」

気合い強く行ったルアルにルシィも負けず答えた。

「ええ!そうしましょう」

2人は宿の隣併設されている食事場の厨房へと向かう。

それを後ろで見ていたスバンは、機嫌が良さそうに鼻で笑った。


久しぶりの投稿…
忘れてません…忘れてません
もう今週には終わらせたい

コメント

  1. がんばってね

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