19.ルアル!魔力を込めた最後の一撃

小説
主要な登場人物
レイト 
 雷を操れる少年
ルアル 
 魔法を使う魔術師の少女

リモク村の登場人物
ルシィ 
 リモク村の宿屋を営む女性。
スバン
 ルシィのお父さん。
ニンバス 
 リモク村の木こりをやっている男性。
 実はルシィの幼馴染

魔物
ゴブリン
 基本はレイトと同じくらいの小さい魔物。しかし力はものすごく強く、ただの大人でも引けを取らない。大きいサイズもおり、そちらは力があまりにも強く成人男性が立ち向かっても、すぐにやられる。

大きな魔物
 大きなゴブリンよりもはるかに大きい3メートルはある魔物。
見た目もゴブリンとは全く違う。お腹は大きく丸く、その中央には大きな口がついている。またお腹の上には小さい顔がある。手は太く地面につくまで長い。大きなゴブリンを片手で握り潰すことまでできてしまう。

前回のあらすじ
 ニンバスとレイトは魔物の弱点であろう口の中に、火を放つため、作戦を実行する!
そんな中ルアルとルシィは出口に向けて歩き続けていた。

ルアルはルシィの右肩を背負う形で、一緒に歩いている。

2人とも疲労が酷かった。
ルアルは魔力がほぼ使えず、ルシィに至ってはルアルにもたれる形で歩き続けていた。

「ルシィさん、大丈夫ですか?」

それに対して、ルシィは少し明るく答える。

「大丈夫よ…ルアルちゃんこそ大丈夫?」

そう言われてルアルは首を横に振った。

「大丈夫ですよ、私は怪我の一つもしてませんから!」

その通りルアルは怪我は何一つ受けていない。
しかし、魔力がなくなることは魔術師、いや魔法世界の住人にとって、充分に死活問題であった。

それでも、ルアルは笑ってみせる。

「ルシィさん、このまま歩けば出口に出られますよ」

元気付けるかのように言うルアルにルシィは頷くとありがとうと伝えた。

ルアルの発した魔法の光が辺りを照らしている。

一度歩いている道にも関わらず、遠く感じるのは疲労からくるものだろう。

それでも諦めずに2人は歩き続けていた。

歩きながらも、ルアルはレイトやニンバスのことを思い出していた。

2人が魔物のほうへ向かってから、何やらいろんな音が聞こえてきていた。

その一つのレイトのバカみたいな叫び声を思い出して、クスッと笑った。

(バカレイト、あいつ大丈夫なのかしら)

心の中で思った。
その後に続く、大きな魔物の叫び声や、前にも響かせたレイトの大技であろう雷が落ちるような音も聞こえていたが、今は魔物の叫び声を最後に、レイトたちの音は聞こえていない。

(もし…2人とも…すでに……)

心の中で思ってしまう不安。
信じたくないけども、勝手に思ってしまう自分の弱さに嫌々する。

そんなこと思うたびに首を横に振っていた。

(ここで…弱気なったらだめ…!)

私は私で前に進まなきゃ!

ルアルはその一言を常に思いながら出口に向けて進む。

勇気を持って、前進することで、この場から生きて帰ることができるとそう信じていた。

ルアルたちは歩みを止めたくない。

そう強く思っていた。

だが、それはすぐにそれは変わることになる。
ルアルたちは歩みを止めた。

なぜなら。

目の前には、ゴブリンが現れたからだ。

ルアルは目を大きく見開いて、今の状況に硬直していた。

「ゲフフフ」

一匹のゴブリンは暗闇の中から現れて、こちらを見つめてニタニタと笑うかのように鳴き始める。

「ゲフゲフ!ゲフフ!」

それを見たルアルは絶望した。

「ここで終わりなの……」

ゴブリンは右手に持った棍棒を振り上げながら、走り寄ってくる。

ルアルは、せめてルシィを庇おうと、前に立ってゴブリンに背中を向ける。

ゴブリンが迫り、棍棒を振り落とそうする。

直撃する!

そう思った時、ルシィはルアルを目一杯の力で左の方へ押し倒した

「きゃっ…!!」

ゴブリンの棍棒を空を舞うと、キョロキョロと左右を見ていた。

「いっ……!ルシィさん!?」

ルアルは驚きながら、覆い被さるように倒れているルシィを見ると、歯を食いしばってる彼女がいた。
そして必死に大きな声を上げた。

「ルアルちゃんあなただけでも逃げて!!」

必死に体を持ち上げようとするルシィ。
隙間から抜け出せそうになるも、ルアルはそこから逃げようとしなかった。

ルアルはルシィを見て涙が出そうになっていた。

(ごめんなさい…ルシィさん….私……)

ルアルは自身が死のうとした愚かな行動にとても後悔した。

ルシィの肩の上からゴブリンが棍棒を振り落とそうとする姿が見える。

それを見たルアルは、真上に覆い被さるルシィの肩を掴んで、右足で地面を強く押しながら、右の方へと転がった。

ゴブリンの振り落とした棍棒はそのまま地面叩きつけ、地面の石が飛ぶ。

その飛び石は、ちょうどルシィを庇うような形でルアルの背中にぶつかる。

「くっ…!」

ぶつかる痛みに目をつぶっていた。

「ルアルちゃん!」

一緒に横に倒れていたルシィが心配そうに声上げると、ルアルの声が返ってきた。

「ごめんなさい…ルシィさん」

そう一言謝ると、手を地面に押しあて、立ちあがろうとする。

「私が生きて帰る約束を守れないでいた」

そう言うと、ルアルは立ち上がりながら、目を見開く。
そこには青く輝く美しい瞳を見せていた。

(そう…レイトもニンバスも…命をかけてるのに…)

そうして倒れたルシィに背中を見せ、魔物と正面で向き合った。

「ゲフゲフフ!」

言葉はわからない、ただこちらを嘲笑するかのように声を上げる。

それを見たルアルは歯を食いしばる。

「あんたなんか私が万全なら相手にもならないんだから!!」

ゴブリンは未だに声を高らかに上げ続けた。
負け惜しみにでも思っているのだろうか。
獲物を狩れる喜びにでも浸っているのだろうか。

そんなことはどうでもいい。

ルアルはただ一つ右の拳を握りしめた。
そして集中する。
これはきっと最後の一撃になる。
ルアルはそう確信していた。

ゴブリンはそんなことはお構いなし、棍棒を振り上げ、ルアルの元へと一歩を踏み出そうとする。

それを見たルアルはその場で右手を引くのと同時に右足を一歩引くと、そのまま地面を蹴った。

本来なら一歩ただ踏み込むだけだが、ルアルは違った。

いつもの倍の速度で、ゴブリンの元へと駆け込んだ。

身体強化の魔術。

ルアルは苦手としたその魔術を使い、ゴブリンの懐へと潜る。

それにゴブリンは、反応できずに止まっていた。

ルアルは地面蹴った勢いのまま前屈みで倒れそうになるも、右手に魔力を込める。

そしてそのまま倒れ込むようにして右手をゴブリンに叩き込んだ。

「グゲェッッッッ!!」

ゴブリンは鳴き叫びながら、3メートル吹っ飛んだ。

格闘経験のないルアルの突きは、周りから見ればヘンテコな突きだった。

それでも身体強化の魔術を使えば倍の威力をゴブリンに叩き込めることができたのだ。

ルアルはそのまま地面に倒れた。

その光景をルシィは驚きながら見ていた。


毎日毎日ネタを考えるの大変ですが、寝る時に考える時が一番捗りますね。
来週も投稿するのでぜひ読んでください。

以上

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