34.炎の少年と新たな旅路

小説
主要な登場人物
レイト 
 雷を操れる少年 
 年齢 10歳
 じいちゃんの言いつけで王都へと旅立つ
 正義に生きることを目指している。

ルアル 
 魔法を使う魔術師の少女
 年齢 11歳
 レイトとは旅の途中出会い、一緒に王都を目指すことになる。
 魔法の世界からやってきた魔術師。

ロクス
 炎を操る少年。
 ルアルのペンダントを盗んだのが出会いの始まり。
 自分が生きるなら、他人がどうなってもいいと思ってる!

前回のあらすじ
レイトとロクスの戦いに決着がつく。最後はレイトの頭突きが勝敗を決めた!だが、その後2人して倒れるのだった。

それから時は立ち、レイトは目を覚ます。
目の前にはルアルが立っていた。

「あっ、目覚めた!」

「…あれ俺は…」

仰向けで寝かされたレイトはそう呟く。

「あんた、あのロクスとか言うやつに戦って、気絶したのよ!」

それを聞くや否や急いで背を起こす。

「あいつは!?」

ルアルは指をさした。
その先はレイトの後ろだ。

「まだ眠ってるわよ」

後ろ振り向くと、そこには倒れたままのロクスがいた。

ロクスは仰向けで眠っている。
それを見たレイトは、笑みを浮かべて喜んだ。

「よっしゃ!俺の勝ちだ!!」

素直に喜ぶレイトに対して、ルアルは怒りを露わにしていた。

「よっしゃじゃない!!あんたたちやりすぎよ!あたりが酷いことになってるじゃない!」

周りを見回すと、炎は上がってはいないが、草木は黒く焦げている。

「あんたたちが倒れた後、私どんだけ魔法使ったと思ってんのよ!!」

それを聞いて申し訳なさそうに頭を下げた。

「わ、悪い…傷も治してくれたんだろ?」

「当たり前じゃない!」

ルアルは、そっぽ向いて答える。

体の痛みがほとんどない。
ルアルが一生懸命に得意ではない回復魔法を使ったのだろう。
それがレイトにとって嬉しく感じた。

傷も治ったので、レイトは立ち上がると、 ロクスを見る。

「それで、こいつどうすんだ?」

2人は倒れているロクスを見た。

ロクスの傷も治っている。
ルアルが2人一緒に治したのだろう。
当人はすっかり眠りについている。

そんな姿を見て、ルアルは素っ気なく答える。

「まあ、ここに置いて行ってもいいんじゃない?」

「うーん…それはダメだ!」

「なんでよ!」

「こいつがまた悪いことしないように、ここでビシッと伝えなきゃダメだ!」

レイトの考えに納得はできないルアルは、頭を抱えた。
そんなことを気にせずレイトは、ロクスの元まで歩く。

「え、絶対めんどくさいことになるわよ…」

そう言ってもレイトは、聞く耳を持たない。
ロクスの元へ行くと、息を吸う。
そして大きな声で叫んだ。

「起きろ!!!」

それにびっくりするルアルは、レイトに近づいて、頭を叩いた。

「いきなり大きな声で叫ばないでよ!」

レイトは、一言謝った。

そんな中、ロクスの肩がビクッと震わす。
それに気づいた2人は、少し構え気味にロクスにを見る。

ロクスは、徐々に目を開ける。

「…俺は……」

今何が起きているかわかっていない様子だが、目を開けた先に映るレイトの顔を見て、飛び上がった。

「お前は!!」

飛び上がると、レイトとの距離を取った。

「おい!ロクス!お前は俺に負けた!」

レイトがそう言う。
当然ロクスは納得していない。

「なんたと!俺がお前に負けるわけがねえ!」

ロクスは立ち上がると構える。

「まだ勝負はついてない!!」

そんな姿にレイトも張り合う。

「なら…もう一度」

そう言いかけた途端にルアルが遮った。

「もう!いい加減にしてよ!!あんた達2人が気絶してたんだから、どっちも負けでいいでしょ!!」

それを言うと、2人はルアルの顔を見る。

「なに!?」

「それを言うな!!」

ロクスは笑みを浮かべると、レイトを見る。

「お前も気絶してた?なら、この勝負は決まってねえ!」

「お前が先に気絶したんだから!お前の負けだ!!」

「どっちも気絶したなら、おあいこだ!」

お互い睨み合う。
そんな姿を見て、ルアルは呆れる。

「もう、いつまでやるのよ!」

そう言って、2人の間に入って、争いを止める。
それに対してロクスは怒った。

「邪魔するな!!」

大きな声に、ルアルは首を少し傾けた。
そしてロクスを睨むと言う。

「ねえ!私があんたの傷を治したの、わかってる?」

指をロクスに押し当て言う。
それに対してロクスはそっぽを向いた。

「知らん!そんなの関係ない!」

ぐぬぬとルアルも怒る。

「こいつ、人の恩義も知らないで!!」

それを聞いて、ロクスは鼻で笑った。

「じゃあ、次はお前が俺と戦ってもいいんだぞ?」

そう挑発に、ルアルは乗っかることにした。

「いいわよ!じゃあ、次は私が貴方を倒してあげる!!」

拳を握りしめるルアル。
それを見てレイトが言う。

「お、おい…ルアル、やめた方がいいんじゃないか!?」

「いやよ!こいつをわからせなくちゃ!」

「そうだよな!ならかかってこいよ!」

そう言ってロクスは、後ろに飛び上がって、距離を取る。

そして、炎の塊を作る。

「くらえ!!」

そう言って、ルアルに向けて投げ飛ばす。
だが、炎の塊は一瞬にして消えてしまった。

「あれ…?」

先ほどの戦いで、ほぼ炎の力を使い果たしていた。

そんなことは、お構いなしにルアルは走り寄る。
右手には、魔力を込めた拳を構える。

「ま、待て!!」

そう叫んでも、怒ったルアルは止まらない。

「くらえ!マジカルアッパー!!」

ルアルは、構えた拳を顎目掛けて突き上げる。
それにロクスは、成すすべなく完全完璧顎にクリーンヒットした。

「ごばッ!!」

ロクスはそのまま後ろへ吹き飛び、仰向けで倒れた。

「ふぅ」

ルアルは、どこか清々しそうにしながら手を払いのける仕草をして、ロクスを見下ろすと言った。

「行きましょう」

そう言って振り返る。

「え、置いて行くのか…?」

このやりとり前にもあった気がするが…
気にせず、ルアルの後ろをついていくことにした。

だが、すぐに後ろから声が聞こえた。

「……俺も…ついていく…」

「え…?」

2人は、後ろを振り向いた。
そこには子鹿のように足を震わせたロクスが立っていた。
ロクスは、再度真っ直ぐレイトたちを見て言う。

「俺もついていく!!」

「「なんでだよ!!」」

レイトとルアルは驚きのあまり、同じ言葉を上げた。一瞬ふざけているのかと思ったが、ロクスは本気のようだ。

「…お前らを見失って勝負が付かないのは、嫌だ!だから、お前達について行く!!」

「はぁ!?」

ルアルは、頭を掲げた。
それと裏腹にレイトは言う。

「まあいいんじゃね?」

その言葉に驚いて、ルアルは振り返った。

「なんでよ!絶対めんどくさいじゃん!」

レイトは、確かにと相槌を打つ。
だが、それとは別に気にかけていることがあった。

「俺は、こいつが悪いことをし続けるのは、ほっとけない!」

「なんで、あんたそんなにこいつに肩入れするのよ!?」

「わかんねえ、でもそう思うんだ!」

レイトはロクスの元へ行く。
目前まで来ると、ロクスを見た。

「俺たちの旅に着いてきてもいいけど、次の勝負で決着付くまで悪いことするな!」

「なんだと!」

「それを守れないなら、次の勝負には乗らない!」

ぐぬぬ、とロクスは言いたげだった。
だが、次の勝負に勝ちたいのか、気持ちを落ち着かせる。
そしてレイトを指差して答えた。

「わかった!!その代わり俺が勝ったら、次は好きなようにさせてもらうからな!!」

レイトは、頷いた。

「よし、じゃあ旅に出る準備をしろ!」

「命令するな!」

また2人で歪み合う。

ルアルは頭を抱えながら思うのだった。

(大丈夫なの…この旅……?)

それがどうかは今後のお話でわかるだろう。

こうして、ロクスはレイト達の旅についていくことになった。

炎の少年編完

炎の少年編完結しました。
まさかのロクスが仲間になると思いませんでした。

次の話もある程度できたら投稿していきます。
少々お待ちください。

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