第6話 宿屋で過ごすレイトとルアル

小説

6.宿屋で過ごすレイトとルアル

部屋は、外見とは違い綺麗であった。ほこりが1つもなくルシィが毎日掃除しているのだと感じた。

ベットが二つあるので、それぞれが荷物を置きベット上に座った。

「いい部屋ね、ルシィさんとってもいい人そうだし」

ルアルがベットに寝っ転がった。

「夕食も用意してくれてよかったよ」

レイトは、笑みを浮かべ夕食を待っている。
するとルアルが不思議そうに独り言を言う。

「こんな良いとこなのに、バケモノが出るなんて、魔物かしら…?」

レイトは魔物が知らないのでルアルに聞いた。

「魔物ってなんだ?」

ルアルは、寝ていた体を起こす。
いつもの解説が始まる。

「そうね、魔物っていうのは魔力を必要とする生き物よ」

レイトの顔を見てルアルが人差し指を立てて語る。

「その分凶暴なのが多くて、賢い奴なんて魔術を使ってくることもあるのよ!」

ルアルは、恐ろしそうに話す。

「でも、魔力の薄くなるこの世界だと基本いないはずなの」

レイトはそれを聞いて首を傾げた。

「じゃあなんで、この村は被害にあってるんだよ」

レイトがそう言うとルアルは顎に指を置いた。

「魔物なのか知らないけど、たまに紛れ込んだりするんじゃない?」

レイトが不満そうな顔をする。
ルアルは、それ見て即座に顔を横に振りむけた。

「だ…だいたい私だって、こっちの世界や魔物について詳しいわけじゃないし、わからないわよ!!」

ルアルは一つ間を置き、口を開けた。

「でも魔力が薄いと生きづらいはずだし、ここまでの被害は何か別のバケモノなんじゃない?」

最後は投げやりになり、ルアルは話を締めた。

なんだか納得いかなかったが、ルアルも疲れている様に見えたので、質問するのをやめた。

ただレイトにとっては疑問ばかりだ。

(なんだこっちの世界って……??)

何気なく話していたレイトだったが、ルアルの言葉が所々わからないところが多い。

そのせいで頭を抱えそうになるが、今はただ疲れが溜まってるので、考えるのをやめて、ベットで横になった。

それから少し時間が経った。

扉を叩く音が聞こえ、レイトは目を覚ました。

(眠ってたのか…)

レイトは目を擦って、上体を起こす。
するとルシィの声が聞こえる。

「夕食の準備ができましたよ」

するとレイトは飛び上がって、ドアの方へ向かった。

「飯を待ってた!!」

はしゃぐレイトに、ルアルは呆れた。

「少しは落ち着きなさいよ…でも」

ルアルもお腹が空いていたのか、ベットからすぐさま立ち上がった。

「私も早くご飯が食べたいわ、早く行きましょう!」

そう言ってルアルは、レイトの近くに寄った。

レイトはドアを開ける。

目の前には、ルシィが立っており笑顔でお辞儀する。

「大広間に案内するわね」

ルシィの一言を聞き、レイトたちは後をついていった。

一階の宿屋受付場の右側のある扉から大広間につながるドアがある。

広間は20人以上が食事できるだろう広さである。厨房がついておりすぐに出来立ての料理を出せるようになっていた。

外から入れる正面入り口と宿屋から直接入れる入り口の二つがあるのが、レイト達は見てわかった。

レイトとルアルだけでは少し寂しい。
ただいろいろと飾り付けを行なって賑やかな雰囲気を演出している。

「ごめんなさいね、賑やかにしたいつもりなんだけど」

ルシィが心配そうに見つめる。

「大丈夫ですよ!」

ルアルは、気さくに答えた。

「夕食まで作ってくださってありがとうございます」

ルアルはペコリとお辞儀した。

「俺もだ、早く食いたい!」

食事が置かれたテーブルにレイトは走り寄る。

「レイト!少しは落ち着きなさいよ」

ルアルは、レイトの服の襟部分を掴む。

「だって美味しそうな料理が目の前に…」

ルアルが少し怒り、レイトがしょんぼりしているとルシィが来た。

「全然気にしないで、美味しくご飯を食べてね」

レイトとルアルは食事が置かれたテーブルの椅子に座った。

肉料理や野菜、パンなど様々な料理が並んでいる。

「久しぶりにまともな飯が食える!」

レイトは、用意されたフォークやナイフを握って勢いよく食べる。

「これうめえな!!」

「少しは綺麗に食べなさいよー!」

「いいだろ!別に!」

と言いながらレイトは食べ続ける

ルアルは、ため息をついて、目を瞑って祈るように手を握る。

数秒後にナイフとフォークを握って料理をいただく。

その姿は洗礼されたもので、ルシィは何か階級の高い身分だと察した。

「お口に合いました?」

背筋を伸ばすルシィが恐る恐る尋ねると

「お、美味しいい」

ルアルが口から漏れるように呟く

「ルシィさん!美味しいです!」

ルアルは笑顔でルシィに顔を向けた。
そして勢いよく食べるレイトも顔を向けた。

「こんなに美味しい料理初めて食った、ルシィありがとな!」

2人の少年と少女の笑顔を見てルシィは、喜んだ。

「いいのよ!ありがとうね!!」

久しぶりのお客さんに絶賛され、ルシィは少し涙が出そうになっていた。

「よかったらルシィさんも一緒に食べましょうよ!」

ルアルが、そう提案するとルシィは申し訳なさそうに答えた。

「貴方達はお客様だから、そんなのダメよ」

すると次はレイトも、ルアルと口を揃える。

「いいじゃねえか、ルシィも俺たちと一緒に食べようぜ!」

「そうよ!そうよ!」

レイトとルアルは、2人目を輝かしてルシィを見つめる。
それを見たルシィはほっと一息つく。

「そうね!じゃあ一緒に食べましょう!今から用意するわね」

テーブルの空いてるところに料理を用意して、ルシィとレイトとルアルの3人で食事をすることになった。

食事をしながら3人はお互いに改めて自己紹介をし、ルシィのお仕事の話や、特にレイトのはちゃめちゃな旅の話で盛り上がった。

「あんたはね、なんでも困ってる人がいたら手を差し伸べすぎなのよ!」

「俺はじいちゃんに正義に生きろって言われてんだ!」

「ふふ、でも人を助けるなんて立派なことじゃない」

ルシィは、微笑みながら言った。

「でも、それでお金無くすなんて酷い話よ!」

「しょうがないだろ!」

3人だけの大きな部屋は、静けさと裏腹に賑やかさ満載だ。
お客さんが途絶えたリモク村では久しぶりのことである。

「そういえばルアルは、なんで旅をしているの?」

ルシィはルアルを見て、質問をした。

するとルアルは、少し動揺して動きが止まった。
数秒黙って持っていた食器をテーブルに置くと話し出した。

「………私は…」

何か言うとした途端に、外から入れる正面入り口のドアを叩く音が鳴った。

3人は振り向く。

「誰かいるのか…?」

レイトがそう呟いて、入り口を睨んだ。

「この時間にお客さんかしら……?」

ルシィは、ハッとして入り口へと駆け出した。

「どうしたの?」

ルアルは不安そうに言い、レイトとお互いに顔向けて首を傾げた。

ルシィは駆け寄ってドアを開けると、そこにいたのは傷だらけの中年の男であった。


第7話くらいから戦うと思う。

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