主要な登場人物
レイト
雷を操れる少年
じいちゃんの言いつけで王都へと旅立つ
また正義に生きることを目指している。
ルアル
魔法を使う魔術師の少女
レイトとは旅の途中出会い、
一緒に王都を目指す。
リモク村の登場人物
ルシィ
リモク村の宿屋を営む女性。
スバン
ルシィのお父さん。傷だらけで登場
ニンバス
リモク村の木こりをやっている若い青年。
実はルシィの幼馴染
前回のあらすじ
レイトはニンバスの薪割りを手伝って、親睦を深めた!その後は祝葬会があると言われたので、ルシィの宿屋へ行くと、村人みんなが集まっていた。村長はレイトたちに感謝を伝え、無事宴の始まりだ!
宴では村人たちが皆楽しそうにしていた。
ルシィは厨房で何やら料理を作ったり、飲み物を持っていったりと忙しそうである。
レイトは村民たちと、今までの旅の出来事を語って楽しそうにしている。
そんな中、ルアルは少し疲れて1人椅子に座っていた。
ゴブリンから救った女性や、他の村人たちからもお礼を言われたりと、いろいろと感謝の言葉をもらっていた。
だが、今までこの世界で人と関わらないようにしていたこともあってか、感謝されることに慣れずに気恥ずかしさが抜けないでいた。
それが原因か疲れて、1人になっていた。
「私って意外と人付き合いに慣れてないのかも…」
ポツンと小声で悲しそうに独り言を言う。
そんな中、ルアルの元へニンバスがやってきた。
「ルアルちゃん大丈夫かい?」
「うん….少し疲れちゃって…」
ニンバスは頷くとルアルの隣くると、飲み物を前に置いた。
「ルシィから温かい飲み物だ」
「ありがとう!」
ルシィが気遣って飲み物を用意してくれていた。
(忙しそうなのに…)
ルシィの方を見る。
今は厨房で料理をしながら、大変そうだ。それなのに気を遣ってくれるところには、とても感心させられる。
ニンバスは、ルアルの隣の椅子に座ると、ルアルに顔を向けた。
「ルアルちゃんに、言い残したことがあったんだ」
ルアルはなんのことかわからず、首を傾げていふとニンバスは語りだす。
「君が最後、俺に託してくれた魔法。あれはきっとレイトくんを救うのに役立った」
そういって、大きな化け物と戦った時の話をした。
「・・・だからあの時、化け物からレイトくんを守ることができたんだ。今みたいに傷だらけにはなったけど」
ニンバスは笑みを浮かべながら、首から包帯でぶら下がっている右腕を見せる。
「本当なら防ぐことができなかったはずなんだ。それでもうまく乗り越えられたのは…きっとルアルちゃんの魔法の力のおかげだと思う…!」
そしてルアルに頭を下げて言う。
「だから…ありがとう」
ルアルは真剣に聞いていた。
ニンバスが頭を下げる姿を見て、首を横に振った。
「頭を上げてください…!」
そう言うとニンバスはルアルの顔を見上げた。
そこには気恥ずかしそうな表情のルアルがいた。
「…私が、あの時かけれた魔術は、ほんの細やかなもの…だから、あの化け物の攻撃は防げられていないと思う」
そういうとニンバスは首を不思議そうに傾げた。
「…でも、しっかり防ぐことができたんだ」
それに対してルアルは端的に答えた。
「魔法っていうのは、人の思いの結晶とも呼ばれているんです」
そういってルアルは、ニンバスをなだめながら答える。
「だから…きっと本気でレイトを救いたいって思う気持ちが、ニンバスさんの力に代わってくれたんだと思います」
それに不甲斐なさそうにニンバスは答える。
「そうなのかな…」
「ええ…きっとそうですよ」
後を押すようにルアルはそう言う。
そんな姿をニンバスは見て、優しく笑って納得することにする。
そんなニンバスにルアルは言う。
「それよりもレイトを助けてくれて…ありがとう」
ルアルは座りながら、頭を下げてお礼を言った。
ニンバスは、自分が感謝される側にいるとは思っていなかったのか、少し驚いていた。
だが、ルアルの気持ちを受け取るためにも、しっかりと答える。
「…お互い様だよ。それにみんな生きて帰れたんだから、よかったよ」
そういうとお互いの顔を見る。
そこには感謝されるのに、不慣れな2人がいて、つい面白くなったのか、クスクスと2人で笑い合った。
するといきなりルアルの名前を呼ぶ声が聞こえた。
「ルアル!」
呼ばれた先に振り向くと、そこにはレイトがいた。
どうやら料理の皿を持って、ご飯を食べながら、ここにきたようだ。
「あんた汚いわね…テーブルでちゃんと食べなさいよ!」
それに対して必死になってルアルへと言葉を募らせる。
「だって!この料理!ルアルが作ったんだろ!」
レイトの持つ料理を見た。
確かにルアルがルシィと共に作った料理だ。
「なんであんた知ってんのよ」
すると大きな声でレイトは言う。
「さっきルシィに聞いたぞ!」
それに細めになるルアル。
「もうルシィさん、余計なこと言うんだから…」
小声でそう言う。
だが、これも気遣ってくれたのかもしれない。
そう考えると、ルアルさんに感謝の言葉を伝えたくなる。
だが、そんな気持ちもお構いなしにレイトは、ルアルの隣に座って料理を食べる。
「めちゃくちゃ美味しいんだよ!こんな美味しい料理作れるなんて知らなかった!」
ルアルは首を振る。
「いやいや、ルシィさんが手伝ってくれたから美味しいのよ!」
そう言っても聞く耳を持たないレイトは、ルアルに言う。
「今度からご飯を頼む!」
ルアルは照れくさそうにしながら怒った。
「うるさい!調理器具もないのにできるわけないじゃない!」
そういうとレイトは残念そうにしていた。
だが、それでもご飯を食べるスピードは変わらない。
「あんた落ち着いて食べなさいよ…」
そう言われたレイトは、頷きながら、料理を食べ続けていた。
ニンバスもこの光景には苦笑いだ。
次にルアルの肩を叩く人がいた。
振り向いてみると、そこには村長がいた。
「村長!?」
ニンバスが驚いたように言う。
「驚かせてすまなかった」
村長が申し訳なさそうする。
それを見たルアルとニンバスは気を使うようになだめる。
「全然大丈夫ですよ!」
そうか、と言うように頷く村長は話を続けた。
「お主ら3人が揃っているところを見てな。改めてお礼を言いにきたのだ」
ルアルとニンバスは、村長を見ていたが、ルアルたちの後ろでレイトは料理に夢中で、話を聞いていない。
それに気づいたルアルはレイトの耳を引っ張る。
「いたたた…なにすんだ!」
「あんた夢中で食いすぎよ…村長さんが、お話あるんだって!」
そう言われて、レイトも村長に顔を向けた。
「よいよい、別にご飯を食べながらで」
ルアルは申し訳なさそうに頭を下げた。
「ルアルちゃん別に気を使わなくていいよ」
笑いながら、ニンバスは言う。
村長は、うんうんと2回ほど頷いていた。
ルアルは、それでも気まずそうにしていた。それに反対してレイトは料理を食べ続けながら、気にせずに顔を村長へ向けていた。
村長は、気を取り直して、3人を見ると口を開いた。
「お主らは、本当によくやってくれた」
そういうと、頭を下げた。
「あの化け物のせいで、リモク村は存続危機に陥っていた。だからこそ、この問題を解決してくれて、ありがとう」
真剣な面持ちでこちらを見ると村長は言う。
ルアルは、なんだか申し訳なさそうにしていると、レイトがルアルの横から顔を飛び出させて言う。
「気にすんな!俺は守りたかっだけだ!この村を!」
ルアルは、勢いよく飛び出した顔を、邪魔!と言わんばかりに、右手で抑えつける
「ぐぬっ」
レイトが顔を抑えられて呻き声を上げたが、気にせずルアルは話す。
「そうですね。レイトの言う通りです。この村を守りたくて…守った…それだけです…」
レイトの声を借りてそう伝える。
だが、ルアルにとっては少し後ろめたさもあった。
最初はこの村を救うことはせず、ただ見過ごそうとしていたからだ。
(レイトがいなければ、きっと私は…)
そう思った時、ニンバスが話し出した。
「今回だけさ。レイトくんやルアルちゃんのような旅人に、どうにかしてもらうのは」
その後は村長に顔を向けて、ニンバスは拳を握りしめる。
「俺が強くなって、次何かあれば俺がこの村を守ってみせる!」
覚悟を決めたようにたくましい姿を見せるニンバスに村長は、感心した。
「うむ、苦を乗り越えた先に真の己を見出せる、とは言ったものじゃ」
ニンバスは力強く頷く。
それとは別にルアルは村長の言葉を聞いて考えていた。
前までの自分。
それは困っている人を見て見ぬ振りをする自分だ。だが、今は人のために命までかけて救うことができた。
(本当の…自分…)
ルアルは考えている。
そんな中、村長は口を開く。
「それはそうと…やはり2度もこの村を救ってくれるとはな」
村長がルアルの目を見て言う。
考え事をしていたルアルは驚いて首を傾げていた。
「2度…?」
ニンバスが、そう言うと村長は続けた。
「お主のような青い瞳の持ち主。それは前にも、この村を救ってくれた魔女様と同じ目なのじゃ」
それを聞いてルアルは目を見開いた。
すると急に焦るかのように村長に問い出した。
「魔女……村長さん!それはいつですか!?」
いつもの冷静沈着さとは違い、レイトも目を丸くしてルアルを見る。
ニンバスも様子が少し違うことに気づいていた。
「…そうじゃな、わしが子供の頃の話じゃ」
そう言うとルアルはがっかりするように肩を落とした。
それを気にせず村長は続ける。
「わしが子供の頃は、この村はまだ荒野で貧しい土地でな。そんなある時、深紫色の長髪でお主のような綺麗な青い瞳を持った者が、魔女を名乗って、一時期この村を滞在していたのじゃ」
ルアルはそれを聞いて目を丸くしていた。
ニンバスも聞いたことのない話で興味深く聞いている。
「その時に、魔女様がこの貧しい土地が豊かになるよう、奇跡を起こしてくれたのじゃ…」
村長は過去を思い出すかのように話す。
「それからは、命を吹き込んだかのように、草は芽吹き、花は咲き、川の水が生命を運び…この村は自然豊かな土地へと変貌したのじゃ。」
まるで子供の頃に憧れをいだいたかのように目を輝かしている。
「だから、今でも魔女様はこの村にとって、命の恩人でもある」
そう遠い目で話す村長は、ルアルが期待してた話と違うことに気づいていた。
「コホン!…まあ、お主が期待してた話とは違って申し訳ないの」
核心を突かれたルアルは申し訳なさそうに答える。
「…すみません」
村長は首を振ってなだめた。
そんな中、ニンバスは村長へ質問する。
「今もその人は生きてるんですか?」
村長は頭を傾げた。
「うーん…用が済んだのか、この村を出発してしまって以降、会ったこともないのじゃ」
村長は少し悲しそうにしている。
「その時子供だったワシにとっては、可憐で強く美しく見えた。初恋の相手でもあった……が、今はどこで何をしているのじゃろうか……死んでいるかの」
少し辛気臭くなってしまったことに、村長は謝った。
「すまぬ…少々、ご老人の思い出話に付き合わせてしまったな」
レイトはそんなことないと首を横に振り、ニンバスは言う
「村長の昔話を聞けるなんてよかった」
そういわれ、村長は優しい笑顔を見せた。
「まあよい、お主たちに感謝していることには変わりない。この場では楽しんでおくれよ」
村長はこの場を後にする。
「村長の昔話なんて初めて聞いた。この村にも昔は魔術師が来たってことなのか」
ニンバスがそういうとルアルは答えた。
「昔は今よりも私たちの世界とこっちの世界は交流があったらしいのよ」
「そうだったのか」
話に納得したニンバスだが、ルアルは何か腑に落ちない様子だ。
ニンバスはそれを察して、そっとしておくことにした。
他の村民からニンバスを呼ぶ声が聞こえた。
「おい、ニンバス!こっちへ来い!話を聞かせろ!」
それにニンバスは答えた。
「わかった!そっちへ行く!」
ニンバスはレイトたちの方を見ると一言伝える。
「じゃあ、また後で」
レイトとルアルは頷いた。
ニンバスはこの場を去った。
レイトはご飯を食べているが、ルアルは思い悩んでいた。
(やっぱり…ここにはいないのかな……)
顔を曇らせている。
それに気づいたレイトが、ルアルの前に、シチューを譲った。
「ルアルも食べろ!」
「え!?なによ!」
前に置かれたシチューはルシィが作っていたものだ。
ルシィはこれが得意料理だと言ってたことを思い出す。
(ルシィさんのシチュー…)
レイトはルアルにスプーンを渡して言う。
「これはルシィ特製のシチューだ」
「そんなもの知ってるわよ!一緒に作ったんだから」
「そうだったのか」
少しがっかりしているが、レイトは気を取り直した。
「俺、ルアルに言わなきゃいけなかったことがある」
そう言われてルアルは首を傾げる。
(なんのことかしら…?)
ルアルは、レイトから言われなきゃいかないことが想像できずにいる。
するとレイトは、にんまりと笑いながらルアルに言う。
「俺のこと信じてくれてありがとう!」
思いもよらない言葉にルアルは息をのんだ。
「ルアルがあの時、俺を信じて大きな魔物に戦わせてくれたから、今この場がある!」
レイトは食べるのをやめてルアルを見る。
「だから、本当にありがとう!!」
レイトから感謝され声が出なくなったルアルは、
少し照れくさそうにする。
「終わりよければ、それでいいわよ、もう!」
ルアルは照れ隠しに顔をそっぽを向ける。
(もうみんな感謝ばかりしてきて…嫌になっちゃう…!)
そうしてルアルは黙って木のスプーンを手に取ると、シチューをすくい、そのまますすった。
甘く、暖かい、そのシチューは、ルアルの心を落ち着かせて笑顔にさせた。
そして照れ隠しのようにレイトに言う。
「レイトのばか」
だが、隣でまた料理に夢中になるレイトには聞こえていなかった。
それを見てルアルは鼻で笑った。
祝葬会は、夜遅くまで続き、この場にいるみんなは大いに楽しんだ。
それから3日目の朝を迎えた。
ルアルたちと楽しい日々を送り、レイトやルアルは、この村でゆっくりと羽を伸ばすことができた。
そうして今村から出発しようとする2人を見送るため、ルシィとニンバスが立っていた。
「気をつけて行くんだよ」
心配そうにルシィが言うと、レイトは元気よく答えた。
「安心しろ!大丈夫だ!」
それでも不安そうにするルシィにニンバスが言う。
「大丈夫さ、レイトくんとルアルちゃんは、あの化け物を倒したんだ。彼らほど心強い人はいないよ」
「それはニンバスもだ!」
レイトの言葉にニンバスは笑った。
「…それでもやっぱり心配よ」
「大丈夫だよ!ルシィさん。地図も食料も貰ったし、当分は安心して旅ができる!」
そう力強くルアルは言うが、涙ぐむルシィは、ルアルを抱きしめた。
「うん…!わかった…でも寂しいよ〜」
ルアルは恥ずかしそうに抱きしめられているが、心地が悪いものでもなかったのか、笑みをこぼしていた。
まるで姉妹のように振る舞う2人は本当に仲が良くなったのだろう。
そんな2人を見てレイトとニンバスも笑っていた。
「ニンバス!この村をしっかり守ってくれよな!」
ルアルたちを見たニンバスに語りかけるようにレイトは言う。
それに対してニンバスは自信満々に答えた。
「ああ!もっと強くなって、この村を守ってみせるさ」
ニンバスはレイトの方へ顔を向ける
そしてお互いの拳を強く握りしめた。
「約束だ…!」
レイトはそれを聞いて笑顔で頷いた。
そうして別れの時が来る。
風が吹き、周りの草木を揺らす。
まるで、2人の旅立ちを、後押しするかのように、風が細やかに吹き出す。
レイトとルアルの2人は歩き出した。
歩き進め、村の入り口で立つニンバスとルシィが徐々に遠くなっていく。
それに寂しさが募り上がってくるが、歩みは止めなかった。
2人は振り返り、手を挙げて言う。
「じゃあな!」
「さよなら」
レイトとルアルは2人で、ニンバスとルシィの方へと手を上げる。
それに応えるようにニンバスも大きく手を上げて振り返した。
「じゃあな!!元気でな!」
ルシィは小ぶりに手を振り返す。
「また会いましょう」
2人の姿を最後まで見送ると、ルシィは言った。
「2人がまたいつか、この村を訪れた時のために…村の元気を取り戻さなきゃ!」
「そうだな!」
寂しいけれど、いつかまたレイトとルアルがこの村に戻ってきてもいいように。
2人は元気よく見送ったのだった。
ルシィやニンバスと別れた後、レイトとルアルは、2人で歩き続けていた。
草木の匂いが、心地よい。
鼻歌でも歌いたくなるような気分でルアルは歩いていると、レイトから声をかけられた。
「なぁ、ルアル」
「なに?」
何気なく返すと、レイトから思いもよらない質問が飛んできた。
「ルアルの旅の目的はなんだ?」
ぎくっと、心に矢が刺されたかのように少し停止してしまうルアルだった。
「いきなり…どうしたのよ?」
ルアルは、不思議そうにレイトを見ると、何か眉間にシワを寄せて考えていた。
「前に宴でルアルと村長が話てた時さ・・・」
レイトは村長が昔魔女がリモク村に訪れた話をした。
そしてその時ルアルの様子が違ったことを問い出した。
「様子が変だったけど、あれ何か関係あるのか?」
そう尋ねると、ルアルは驚きながら答えた。
「あんた変なところで鋭いよね…」
「そうか!?」
度肝を抜かれたようにレイトは驚く。
それを見てルアルはやれやれと首を振りながら、細目でレイトを見た。
「まあ合ってるわよ」
ルアルは、いつもより落ちついた様子で話した。
「まあ、別に隠す内容でもないから教えてあげてる」
そう言うと、ルアルの旅の目的が語られた。
「私はお姉ちゃんを探してるの」
レイトは目を丸くした。
「お姉ちゃん…!?」
「うん…」
ルアルは悲しそうに答える。
「私のお姉ちゃんはね…今行方不明なの…」
辛そうながら真剣な面持ちで語るルアルにレイトは黙った。
「お姉ちゃんはね、とっても優秀で、魔法学院でも一目置かれた存在だった」
昔を思い出すかのように、ルアルは話す。
「その才能は、ゆくゆくは魔法学院長の次期弟子にまでなると期待されていた…それなのに」
ルアルは、俯くように地面を見る。
「…お姉ちゃんは、姿を消した」
レイトはそう聞いて疑問に思った。
「なぜだ?」
「わからない…でも、最後の夜…たまたま物音を聞いて、屋敷の門へ行くと、お姉ちゃんが屋敷から出る姿を見たの……そこで、どこへ行くのって聞いたら…お姉ちゃんは答えたわ」
『ごめん…ルアル。私は知りたいの…』
ルアルは暗い記憶を思い出すかのように顔を曇らせた。
「その時のお姉ちゃんは何か深刻な表情をしていた…その後は、屋敷を出ていったわよ。あの時は、すぐに戻ってくると思って止めなかった…けど…それ以降、屋敷に戻ってくることはなかった……」
その後に、陰鬱な気持ちになりながら、ルアルは言う。
「お姉ちゃんは、何を知りたくて出ていったのかも、私には、わからない……」
引き留めなかったことを後悔するように、辛い表情を見せるルアル。
本来の強気な姿とは対照的な姿を見て、レイトは深刻な悩みだと理解した。
そんなルアルにレイトは言う。
「それなら、俺が一緒に探してやるよ!」
ルアルは、その言葉を聞いてレイトを見た。
そこには、いつも通りの元気のいいレイトがいた。
「1人で探すなら、2人で探した方がいいだろ!俺もルアルの姉ちゃんを探してやる!」
その言葉を聞いたルアルは、つい声が漏れ出た。
「レイト…」
今まで魔法世界とは、違うこの世界にきて、ずっと1人でルアルは旅していた。だからこそ、ずっと寂しさが付き纏っていた。
だが、レイトに出会えてから、なんだか明るい旅になった気がする。
ルアルは、目を瞑る。
何かを思い考える。
そして次は、口角を上げると鼻で笑って、レイトに言う。
「バカレイトなんだから、役に立つの?」
いたずらっ子のように笑みを浮かべると、突然レイトの先を走り抜けた。
「なに!」
レイトは心配して損した気分だ。
だが、そんな様子を気にせずルアルは前を走った。
(…ありがとう)
直接言うには恥ずかしいので、密かに心に思う。
(レイトに…何回も救われてる…)
ルアルは、この村の出来事を振り返っていた。
命懸けで魔物と戦ったこと、レイトやニンバスさん、それにルシィさんと楽しく過ごしたことも、振り返る。
そんな中で、特に心に残ったのはレイトと言い争ったことだった。
彼女は最初村を救うことなく、この村を去ろうとしていた。
それは、この世界で魔法を使って、人を救ってはいけないという魔術師としての掟があったからだ。
ルアルは、この世界にきてその考えが、常に自分の本心だと偽っていた。
だが、レイトはそれを打ち砕いた。
レイトが言った一言。
『後悔は後からやってくるんだ』
その一言は、ルアルの胸に大きく刻み込まれた。
もしあの場で去ることを決めていたら、村人達は、もっと酷い目にあって、ルシィさんやニンバスさん、他の村の人々の笑顔を見ることが、できなかったかもしれない。
そう考えると、掟やルールなんかよりも、大事なものがあると、ルアルはレイトに気付かされたのだった。
ルアルは走るのを止めて、先の長い道のりを見る。
王都へは、まだ遠い。
だが、そこで立つルアルは、どこか誇らしげで自信に満ちた姿を見せていた。
そして一言、呟いた。
「人を救うのだって、悪くないじゃない」
彼女へ、心地のよいさわやかな風が透き通る。
なんだか、本来の自分を見つけた気がする。
後ろから走るレイトが追いついた。
少し疲れ気味になりながらも、ルアルの方へ声をかける。
「なんでいきなり走ったんだ!」
それに対して答えることもなく、ルアルは振り向いた。
その先にはもうリモク村は見えなくなって、どこか寂しさを感じる。
それでも、ルアルは力強く、堂々とレイトに言った。
「早く王都へ行きましょう!」
その先の彼女の顔は、とびきりの笑顔を見せたのだった。
魔物退治編 完
お疲れ様です。
まさかここまで書くことができるとは思っていませんでした。正直途中で頓挫すると思ってましたが、なんとか書き上げました。
雷光の勇者、魔物退治編どうでしたか?
ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。
次の話も考えているので、書き終えたら投稿します。
ちなみに次の編は、「炎の少年編」です。
コメント