48.ルアルとダーマの決着

小説
主要な登場人物
レイト 
 雷を操れる少年
 年齢は、10歳。じいちゃんの言いつけで王都へと旅立ちながら、 困ってる人を助ける。じいちゃんに言われた通り、正義に生きることを目指して王都に向かっている。

ルアル 
魔法の世界からやってきた魔術師の少女。ピンク色の髪で普段はツインテールにしている。蒼い目(通称 月の目)を持つ。年齢は11歳。レイトとは旅の途中に出会い、一緒に王都を目指すことになる。目的は姉を探すこと。

ロクス
炎を操る少年。赤茶色のツンツンとした髪型をしている。年齢はレイトと同じ10歳ルアルのペンダントを盗んだのが始まり。ひょんなことから一緒に旅をすることに。レイトとは違い、自分が生きるためなら、他人がどうなってもいいと思ってる!

メア村の登場人物
トウロ
メア村の門番をしている。生真面目な性格。

コウウ
メア村の村長。

ディーボット
ダーマ教を布教する教祖ダーマの手下
子供すら容赦なく手を出す非道。
人が苦しむ姿が好き。

ダーマ
ダーマ教を布教するためにきた教祖。
炎の魔術「サンクトニグス」を使う。

ルアルは、燃え落ちた屋根の下敷きになった。ダーマは、それを見て大笑いする。

「基礎がなんだ!才能がなんだ!!死んでしまえばそれまでだ!がっはっはっはー!!」

愉悦感に浸るダーマは、ふと気づく。

「待て、ここから出るにはどうしたらいい…!!」

前方には、燃え盛る残骸で溢れている。
ダーマは、教会の奥にいるので出ることができない。

「…思いつきで、やるべきじゃなかったか」

少し後悔しているが、ルアルに勝ったことを思い出して、ニヤリと笑う。

「まあ、私は運がいいから、なんとかなるだろう」

その場に座り込むと、自信満々に言う。

「私には、神のご加護がついているのだからな」

笑みを浮かべて、天井見上げる。
崩れた屋根の場所から夜空が広がり、満月も見える。

「美しい月だ。まるで私を輝かせているようだ」

清々しい気持ちがいっぱいで、安堵している。

教会内は、燃えている。
そんなことは気にせず、月に手を伸ばすと野望を語った。

「これから、私が神の代わりになって、この世界を支配してやろう。私は皆から慕われ、永遠に謳われる存在になるのだ!」

不敵に笑みを浮かべ、これからは、「自分の時代が来る」その確信を持った瞬間。

「あんたが、そんな存在になれるわけないでしょ」

ギクっと肩を強張らせると、目前の燃える残骸を見る。

「クアラ!」

呪文を唱える声が聞こえると同時に、残骸から水飛沫が上がった。燃える炎を消すには、充分なほどに、水量が降り注ぐ。

「あんたのその楽観さには、言葉を失う」

残骸を持ち上げて出てきた少女が立つ。

「…き、貴様!?」

先ほどのオリーブ色の目とは違い、月のように蒼く輝く目を見せた。

「…な、なぜ無事なんだ」

「そんなの簡単よ。私は魔術師だから」

持ち上げた残骸を横に払う。
ルアルの周りには魔法の層が張られている。その力でどうにか防いだのだろう。

怯えるダーマは、即座に右手で燭台を取り出しす。しかし、同時にルアルは杖をダーマに向けて振った。

その瞬間に、ダーマの手元が弾かれて、燭台がそのまま飛んでいく。

「なにィ…!?」

飛んでいく燭台に目線を奪われていると、その隙に、ルアルが走り出した。

「っ!!」

身体強化の魔術で、一瞬で距離を詰めたルアルは、ダーマの目前に立つ。

そして右手で、握り拳を作ると、ダーマの腹部に叩き込んだ。

「ぐぼぉっ!!」

魔術で強化された拳は、少女が殴るよりも、何倍もの威力を出す。
うずくまっているダーマの胸ぐらを左手で掴む。

「…あんたは知らないと思うけど…こっちの世界の満月の日、魔術師は…全力の80%を出せる」

ルアルは、握りしめた右手を身体強化の魔術で強化する。

「……ま、まて…す、すまなかった!!」

ダーマの声は、ルアルに届かない。
そのまま、左頬目掛けて、ルアルの拳は叩き込まれた。

「っ!!」

強烈な一撃を喰らったダーマは、そのまま後ろに倒れる。それを見下ろしながらルアルは言う。

「まあ身体強化の魔術は苦手だから、全力も何もないんだけどね」

余裕な姿を見せて、ダーマとルアルの魔術勝負は、ルアルの勝利で終わった。

ルアルは、ボロボロになった教会を見回す。
黒く湿った炭と化した残骸が散らばっている。
それらを見て思う。

(…正直…天井に気づいてなかったら、死んでたかも…)

あの時、ダーマの火球を追って、天井に気付けたからこそ、魔術でなんとか防ぐことができたが…そうでなければ、ルアルは悲惨なことになっていたかもしれない。それを想像して肝を冷やす。

「次からは気をつけよう…」

一人でに呟いて、教会を出ようとした時。

後ろから、ダーマが起き上がった。

「ぐあああ!!よくもやってくれたな…!!」

怒り心頭に発するダーマの声を聞いて、ルアルは、振り向いた。

「…あんた、随分とタフね」

余裕そうに答えるルアルと違って、ダーマは凹んだ左頬を見せながら、興奮気味に言葉を発する。

「うるさい!お前はもう絶対に許さない!すごい痛い目に合わせてやる!神に祈ろうがなんだろうが、絶対に許さんぞ!!」

そう言って懐に手を入れる。
だが、燭台はない。

「あ…」

吹き飛ばされたのを思い出して、辺りを見回す。
しかし、燭台がすぐには見当たらない。

「もう無駄よ。あんたは燭台という媒体がなければ魔術は使えない」

ルアルは杖をダーマに向ける。

「もう観念しなさい。あんたじゃ私には勝てない」

それに対して、歯を強く食いしばりながら、ダーマは鼻息を荒げた。

「…そんなはずはない!!私はまだできる!!…そうだ!!燭台無しに魔術を使えばいいのだ!!」

「ダメよ!あんたみたいな基礎ができてない人が無理に魔術を使おうとしたら!!」

ルアルがダーマの元に駆け寄る。
しかし、それを振り解くかのように、ダーマは右腕を横に振るった。
近づいたルアルの口元をかすめる。

「…キャッ!!」

そのまま座り込んだルアルは、口元が擦り切れ、血が滲む。目前では、右腕を掲げ、手のひらを開けたダーマがいる。

「私ならできる!同じようにすれば、使えるはずだ!!」

ダーマは、心に思う。

(燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ!!)

そして、叫んだ。

「私の魔術!サンクトニグス!!」

ダーマの手のひらから微かな炎が垣間見える。

それを見てニヤリと笑った瞬間。

右腕を起点に全身が炎で燃え上がった。

「があああああああアアアア!!!」

絶叫し、そのまま倒れ込む。
それを驚愕しながらルアルは見ていた。

「ッ!!」

炎を消そうと転がるも全く消えない。次第には、動かなくなってしまう。それをルアルは、依然として、ただ見ていることしかできなかった。

全身が焼けるような痛さにもがきながら、ダーマは苦しむ。そして、微かな力を振る絞って言葉を発した。

「ダァズゲデ…」

その言葉を聞いて、ルアルは我に帰る。
すかさず杖をダーマに振るった。

「クアラ!!」

魔術で大量の水飛沫をダーマに浴びせるも、気休め程度にしかならない。
依然としてダーマは燃え続けている。

心臓が高鳴るルアルは、自己暗示のように呟いた

「冷静になれ…冷静になれ…」

頭の中で整理する。

「これは、こいつが単に燃えているんじゃない。こいつの体中に流れる魔力が燃えているんだ」

そう言って、唾を飲むと、拳を握りしめる。
そして、ダーマを見た。

この男は、いろんな人に悪いことをしてきた。村の人たちからは、死んでもらったほうがいいのかもしれない。
でも、目の前で苦しみながら死んでいく姿なんてルアルは見たいとも思えなかった。
ルアルの心によぎる。

(後悔はしたくない…!!)

燃えるダーマの体に右手を差し伸ばした。

水の魔術を使って右腕を水の膜で覆い包む。

そして、ダーマの体に触れると、目を瞑った。

(…無理な魔術を使おうとしたから魔術暴走が起きてるんだ。だから、逆に私の魔力を注ぎ込んで、魔術干渉を起こす)

魔術干渉。
それは相手の魔術を制止するのに役立つ技法だ。
魔術とは本来、高等に組み込まれたパズルのようなもの、一つズレれば未完成、不安定な代物となる。故に、他人の魔術に対して、自身の魔力を無闇に注ぎ込む行為は、高等に組まれた魔術を乱す行為であり、作り上げたパズルをぐちゃぐちゃにかき回すようなものになる。

なお、高次元の魔術師が組んだ魔術は、そう簡単に崩すことはできない。

だが、ダーマの素人同然の魔術は、魔術干渉を引き起こせる可能性がある。

ルアルは、集中する。

燃えるダーマの体から発する熱気は、額に汗を湿らせた。熱い。それでも、目前のことに集中して、ルアルは蒼い目で、ダーマを見た。

触れた右腕から魔力を注ぎ込む。
次第に青い光がルアルとダーマを優しく包み込んだ。

それから…
ダーマから出ている火は、ゆっくりと消え、最後には完全に火を消すことに成功した。

「はぁ…はぁ…」

ルアルは吐息をついた。
ゆっくりと、右腕を放し、様子を見る。

人の焼けた臭いが、胸を苦しくさせる。
目前のダーマは、完全に意識がない。

「……っ!」

悔しさのあまり唇を噛んだ。

「…やっぱり…助けられなかった」

俯いて、涙が出そうになる。
予想はしていたが、自分の無力さに蝕まれる。

もっと早く対応していれば、助かったかもしれないのに。ルアルは、悔しはのあまり叫んだ。

「…だから、無理に魔術を使うなって言ったのよ!!」

すると、目前でビクッとダーマの体が反応した。
ルアルは、驚いて後ろに仰け反りそうになる。

「ゴホッ…ゴホッ…」

咳をするように、息を吹き返したのだ。
以前として気を失ったままだが、呼吸はしている。それを見たルアルは目を丸くする。

「あんた…本当にタフね……」

驚愕のあまり、少し笑いながら、ダーマに手をかざすと、回復魔術を使った。

「サーナ」

死なないために使うその魔術は、ルアルの優しさで満ち溢れている。

これにて、ルアルとダーマの勝負は完全に終結したのだった。

そして時を少し遡り、レイトたちは…


次からはレイトたちの話をメインでしていきます。

ここ数日、辛いもの食いすぎてお腹痛いです…
あと、今回ので、もう話数ストックなくなったので、書かないとマジで投稿できません。

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